「女友達は恋愛と無関係」に潜むミソジニー

 最近また放置気味ですが、今回は久々に「非モテ」ネタで。

 押井徳馬氏のこの記事では、非モテ男性の人達に「とりあえず彼女作れ」とアドバイスすることの無意味さが論じられています。記事の趣旨には全面的に賛同するんですが、問題はコメント欄でのg氏の発言です。

彼女を作る前に女友達を・・・という下りですが、
彼女を持つ事を最終目的とする場合は、
女友達を持つ持たないというのはあまり意味を成さないと思います。
基本的に女性は異性に対して友人と恋人を
性的魅力などの要素で厳格にジャンル分けして、
友達のカテゴリにいれられた人は半永久的に
そこから脱する事は出来ないようです。
(中略)
こういったことを考えると、特に深い意図も戦略もなく、
単純に女友達を作っても恋愛には繋がらないかと。

 g氏と同じような主張は、以前Masao氏からもありました。ここでは「好意は必ずしもセックスに繋がらない」ということが述べられています。

 「単純に女友達を作っても恋愛には繋がらない」というのは何も不思議な話ではありません。異性全てが性的対象になるわけではないのだから当り前で、「友達」からすぐさま「恋愛」に繋がると思う方がどうかしています。不思議なのは、これが何故か「だから女友達をいくら作っても恋愛には無関係だ」となってしまう点なんですよ。

 非モテを自称するヘテロ男性の中には、「異性との接点が少ない」ことを嘆く人が少なくありません。そういう人にとって、異性の友人が増えることは「異性との接点」を持つ機会を増やすことにも繋がります。直接の友人と恋愛関係になることはなくても、例えば「友人の友人」と恋愛関係になるのは珍しい話ではないでしょう。「女友達と恋愛関係になれないのなら、女友達が何人いようと恋愛には無意味」というのは、ちょっと短絡的に過ぎます。

 ただ、恋愛相手を見つける確率を上げたければ、そこから積極的に異性との接点を増やしていく必要はあるでしょう。そういう意味では「特に意図もなく女友達が増えただけでは恋愛に繋がらない」というのも間違いではありません。

 しかし、g氏の発言にはさらに引っかかる点があります。

ですが、悲しいかな非モテ男性の中にはそれを勘違いして
「未来永劫セックスしようと思ってくれない関係」を
いつの間にか女性との間に結ばされながらも、
それを口先三寸で見事に騙されて、
じわりじわりと時間と労力と金を搾取されてしまい、
いつの間にか無駄に歳だけとってしまったら、
その相手はイケメンと結婚することに
なってしまってた・・・なんて事もザラにあるわけです。
(中略)
つまりは友達止まりの関係を望む相手を出来るだけ選別して早い段階でふるい落とし、
将来セックスしてくれる程愛し合えるであろう
女性のみをチョイスして労力と資産を投資する。

 「女友達」の話なんですから、「口先三寸で見事に騙されて、じわりじわりと時間と労力と金を搾取されてしまう」ような場合は極めて特殊でしょう。これが同性の友人の話だったら、普通の友達付き合いで「時間とお金と労力を無駄に使ってしまった」などと言う人が居るでしょうか?

 g氏の発言は、「セックスに至れない」というだけの理由で「恋愛に繋がらない異性の友人関係」を目の敵にしているようにしか見えないんですよ。相手の女性の立場から見れば、「セックス(及び結婚・出産)がなければ貴方との付き合いは無価値です」と言われているに等しいでしょう。こうした考え方からは、女性への憎悪や恐怖感が如実に見て取れます。

 「女友達から恋愛関係に至れない」と悩む非モテ男性の人がもし上記のような考えに至ったなら、「交友関係を無価値とされ、性的な役割のみを求められる」女性の立場について少し考えてみて欲しいと思います。非モテ男性の多くが「セックスの関係さえ持てれば他はどうでもいい」とは思わないのと同じように、多くの女性もそうは思いません。

 g氏の「戦略」のおかしな点もここにあります。「友達止まりの関係を望む相手」を極度に軽視するといった戦略は、周囲の人間にすぐにそれと悟られてしまうため、「恋愛にセックス以外のものをも求めている」多くのヘテロ女性に信頼されなくなってしまうんですね。「女友達を持つ」ことは恋愛の充分条件にはなりませんが、g氏のような戦略では、恋愛の必要条件すら満たせなくなる可能性が高いでしょう。ここにミソジニーの皮肉な悪循環があります。

 恋愛関係を成立させる確実な方法は存在しません。しかし、「恋愛・結婚でなければ自己の承認欲求を満たせない」と考える必要もありません。こう考えてしまう人は、恋愛や結婚に過剰な幻想や強迫観念を抱いている人でしょう。恋愛しなくとも人は承認されるし、生きてもいけます。どうしても「恋愛しなければ耐えられない」人は、恋愛するよりも先に、自分の持っている幻想や強迫観念と折り合いをつけていくことを考える方が先決かもしれません。